福島県の土湯温泉を中心とした地域で伝承され作られてきた土湯系。
今回はそんな土湯系について、特徴や工人による作品を紹介しながらのまとめ記事です。工人一覧表もあります。
目次
土湯系の特徴
土湯系は大きく分けて、土湯温泉を中心とした「土湯」、飯坂温泉の「飯坂・鯖湖」、そして中ノ沢温泉の「中ノ沢」の3つに分類する事ができます。
同じ土湯系統に属していますが、それぞれ個性がありますので、順に解説していきます。
1.土湯

まず最初には土湯です。頭が小さく胴が細いのが土湯系こけし特徴です。
頭部には蛇の目と呼ばれるロクロ線が描かれ、前髪と鬘の間にカセと呼ばれる赤い模様があります。
そして胴体の模様は横線の組み合わせが主体となっていて、ロクロの回転を逆回転して折り返すように線を描く「返しロクロ」の技法が用いられています。
その横縞模様の太さや組み合わせが、見どころの一つともなっています。
- 頭部と胴体は嵌め込みが基本形
- 頭頂には蛇の目と呼ばれる「黒」の輪線模様が描かれる
- 前髪は『ボサボサ』したものと『櫛形』に大別できる
土湯系の作品を紹介します!


佐久間浅之助⇒由吉 ⇒芳衛 ⇒芳雄と続いた、土湯系湊屋本流の後継者として、将来を嘱望されていましたが、平成14年に逝去されてしまいました。
俊雄さんの後を継ぐ工人がおらず、湊屋本流が途絶えてしまうのは残念ですね。

伝統を大切にすることも大事ですが、自由な発想で表現することの大切さを教えてくれたのが、若い世代の女性を中心とした平成時代のコレクターたちでした。

野地忠雄工人は惜しくも平成24年に80才で永眠されてしまいました。しかし、娘である佐藤三起子さんが「野地三起子」を名乗り製作されるそうです。今後のご活躍が楽しみですね。

こちらの作品に付きましては別記事で特集していますのでご覧下さいませ。
土湯系工人の一覧です
- 阿部 一郎 (1925-2000)
- 阿部国敏 (1972-)
- 阿部計英 (1937-2017)
- 阿部新一 (1928-)
- 阿部新次郎 (1893-1957)
- 阿部シナ (1920-2003)
- 阿部治助(1885-1952)
- 阿部広史(1898-1984)
- 阿部一好(不明)
- 阿部友寿(不明)
- 阿部敏道(1941-)
- 阿部利昌(1943-)
- 阿部勝英(1924-1989)
- 阿部敏英(1952-)
- 阿部作雄(1914-2000)
- 安藤未黎(1907-1966)
- 石井信明(1928-2016)
- 今泉源治(1934-)
- 今泉房雄(1942-)
- 井上正孝(1949-)
- 岩見房吉(1882-不明)
- 岩附義正(1948-)
- 植木正子(1908-1977)
- 梅津正永(1923-2009)
- 大内恵津子(1960-)
- 大内今朝吉(1883-1962)
- 大内慎二(1957-)
- 大内一次(1909-1985)
- 太田孝淳(1939-)
- 太田精二(1926-)
- 小幡福松(1898-1968)
- 小幡初子(1928-1948)
- 加藤保明(1938-)
- 菅野国男(1936-)
- 菅野富男(1930-)
- 斎藤太治郎(1869-1945)
- 斎藤弘道(1930-)
- 斎藤とみ(1935)
- 斎藤僚子(1963-)
- 斎藤忠七(1917-2010)
- 佐久間浅之助(1847-1906)
- 佐久間粂松(1875-1945)
- 佐久間七郎(1885-1954)
- 佐久間太市(1900-1974)
- 佐久間伝六(1931-)
- 佐久間虎吉(1891-1963)
- 佐久間虎吉(1914-1985)二代目
- 佐久間芳衛(1898-1957)
- 佐久間米吉(1886-1952)
- 佐久間由吉(1872-1960)
- 佐久間勝(1905-1982)
- 佐久間弥(1907-1995)
- 佐久間芳雄(1921-1996)
- 佐久間常雄(1906-1996)
- 佐久間嘉光(1940-)
- 佐久間俊雄(1948-2002)
- 佐藤兵七(1902-1969)
- 佐藤佐志馬(1907-1985)
- 佐藤久弥(1935-2016)
- 佐藤俊昭(1930-2009)
- 佐藤正一(1905-1972)
- 佐藤篠木利夫(1931-2017)
- 陳野原幸紀(1947-)
- 陳野原和紀(1929-1998)
- 清野武治(1937-)
- 芹沢洋治(1943-2017)
- 高橋賢三(1939-)
- 玉根四郎(1929-)
- 竹石秀徳(1938-2014)
- 徳永慎一(1933-)
- 冨田喜夫(1944-)
- 西山勝次(1884-1956)
- 西山徳二(1916-1941)
- 西山敏彦(1958-)
- 西山憲一(1920-2003)
- 西山英子(1952-)
- 西山敬三(1918-)
- 西山三浦利夫(1934-)
- 野地三起子(1957-)
- 野地忠男(1931-2012)
- 渡辺 重吉(1921-1996)
- 渡辺ゆう子(1941-)
- 渡辺義雄(1929-)
- 渡辺忠雄(1938-)
- 渡辺隆(1953-)
- 渡辺鉄男(1937-2017)
- 渡辺等(1923-1982)
- 渡辺亨(1970-2007)
- 渡辺忠蔵(1921-2008)
- 渡辺恒彦(1939-2011)
- 渡辺定巳(1917-1994)
- 渡辺和夫(1940-2005) 二代目浅之助
- 渡邊富士夫(1948-2007)
2.飯坂・鯖湖

飯坂鯖湖の特徴は、独特の鯨目とユーモラスな長く延びた垂れ鼻に特徴があります。胴は輪線(横縞)模様、草花模様が多く見られます。
比較的スマートなフォルムのもの、反対にずんぐりした物とがあります。主に飯坂鯖湖温泉周辺の地域でつくられています。
- 独特の流れるような鯨目が描かれる
- 長く伸びたーユーモラスな鼻
飯坂・ 鯖湖の作品の紹介を紹介します!




飯坂鯖湖の特徴(独特の鯨目とユーモラスな長く延びた垂れ鼻)がよく出た作品です。優しい目をしていますね。
飯坂・鯖湖の工人一覧です
- 稲毛豊(1929-1985)
- 佐藤喜一(1894-1976)
- 高橋 美恵子(1958-)
- 高橋 順子(1955-)
- 高橋忠蔵(1893-1981)
- 高橋通(1953-)
- 高橋佳隆(1927-1995)
- 渡辺喜平(1910-1988)
- 渡辺 キン(1881-1941)
- 渡辺 賢一(1947-)
- 渡辺 聡(1981-)
- 渡辺 幸典(1950-)
- 渡辺 義徳(1951-)
3.中ノ沢

中ノ沢系は、会津磐梯山の麓、中ノ沢温泉周辺でつくられています。
他の産地では見られない異色な雰囲気を持ったギョロ目の「たこ坊主」や「あお坊主」と呼ばれる型があり、強烈なインパクトを放っています。
- 大きなギョロ目
- 目の周りを赤く彩色した「たこ坊主」がある
- 頭頂に描かれた蛇の目には緑が使われ『あお坊主』がある
- 前髪には赤も使われる
中ノ沢の作品を紹介します!


初めはオリジナルの新型を制作していましたが、平成12年に師匠である本多洋工人の許可を得て、中ノ沢系も作るようになったそうです。

独立当初は、鳴子の高亀系を制作されていましたが、昭和45年頃より中ノ沢系を作るようになりました。


師匠である芳蔵さんにはかなり厳しく仕込まれたそうです。昭和49年に結成された「たこ坊主会」のメンバーでもありました。

現在は作られていないという話もあり、新作を手に入れたというような話もあり・・・。実際はどうなっているのでしょうか・・・?いずれにせよ状態の良いものを手に入れるのが難しくなってきているのは事実の様です。


こけし以外にも木地修行を重ね、木地師本来の仕事である木地挽細工物(お盆や茶托、茶入れなど)も作られた貴重な工人さんの一人でした。


昭和48年にタコ坊主会を創立し、長年にわたり事務局長を務められました。
中ノ沢の工人一覧です
- 渥美壽雄(1927-2019)
- 荒川洋一(1938-)
- 安藤良弘(1900-1981)
- 石川功(1936-2012)
- 磯川盛雄(1937-)
- 磯谷茂(不明)
- 岩本芳蔵(1912~1973)
- 柿崎文雄(1947-)
- 斎藤徳寿(1926-)
- 斎藤良寿(1960-)
- 坂本恭啓(1985-)
- 酒井正進(1899-1976)
- 三瓶春男(1929-1987)
- 鈴木久雄(1954-)
- 瀬谷幸治(1952-)
- 瀬谷重治(1924-2004)
- 野矢里志(1978-)
- 野矢俊文(1946-)
- 半澤正則(1954-)
- 平井盛(1890-1950)
- 福地芳雄(1927-1985)
- 本多淳嗣(1961-)
- 本多信夫(1918-1995)
- 本多洋(1934-2011)
- 村田徳次(1926-2018)
- 渡辺長一郎(1917-2012)
以上、今回は土湯系についてのまとめ記事でした。今後もこのページは新しい情報が入り次第更新していきます。
最後までお付き合いくださりありがとうございました。また別の記事でお会いしましょう。